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前立腺肥大症

前立腺肥大症とは?

前立腺は、膀胱の出口に位置するクルミ大の臓器で、男性だけが持っています。この前立腺が加齢とともに肥大し、尿道を圧迫して排尿障害を起こすのが前立腺肥大症です。

年齢が高くなるにつれて発症数が増える傾向にあり、高齢化社会の到来で患者数が増え続けています。現在日本の55歳以上の男性の二割以上に前立腺肥大の症状があることが確認されています。
症状は人によりさまざまですが、毎日何度も行う排尿がうまくできないことで、日常生活に大きな支障がでてきます。

前立腺肥大を放置しておくと、薬物療法では改善できなくなる場合もあり、さらには膀胱や腎臓に悪影響を及ぼすこともあります。50歳を過ぎた男性は日ごろから尿の出方をチェックし、異常を感じたら早めに受診することが大切です。

前立腺肥大症の症状は?

前立腺肥大症の主な症状は尿の出方の異常、排尿障害です。
排尿後、まだ残っている感じがする残尿感、トイレが近くなる頻尿、夜中に何度もトイレに起きる夜間頻尿、尿がすぐに出なかったり排尿に時間がかかる排尿遅延、尿に勢いがなくチョロチョロでる尿勢の低下、急な尿意を感じ我慢できなくなる尿意切迫感、おなかに力を入れないと尿が出ない腹圧排尿など、さまざまな症状があります。
尿がまったく出ない急性尿閉になると、尿意があっても排尿できず、おなかが張り下腹部の激しい痛みがあります。
夜間頻尿により夜中に何度も目をさまし、熟睡が妨げられて慢性的な睡眠不足や体力低下を引き起こすことも珍しくありません。

また、高齢者が夜中に薄暗い部屋をトイレに向かう途中での転倒し、それが原因で寝たきりになるケースも多いので、注意が必要です。

前立腺肥大症の原因は?

前立腺肥大症のはっきりした原因はわかっていませんが、50才過ぎの発症数が多いことからも明白な通り、加齢に関係していることは確かです。
また、男性ホルモンの分泌量の低下により、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れることも主な原因と考えられています。何らかの原因で思春期前に精巣を失った男性は、高齢になっても前立腺肥大にならないことがわかっています。

加齢や男性ホルモン以外の原因として日常の生活に密接していることもいくつかあります。大量のアルコール摂取により前立腺がむくんで大きくなることがあるので注意が必要です。
また、食生活の欧米化で高脂肪食や動物性蛋白質の摂取量が増えたことが前立腺を肥大化させたという説もあります。

前立腺肥大症の検査・診断は?

前立腺肥大の初診時では、WHO(世界保健機構)が定めた国際前立腺症状スコア(I-PPS)という質問票を使って問診が行われ、自覚症状ををスコア化して病状を把握します。

初診では一般的に、映像から前立腺や膀胱の形や大きさ、残尿量を調べる腹部エコー検査、腎臓の機能や前立腺がんの有無を調べる血液検査、腎臓の働きや糖尿病の可能性などを調べる尿検査を行います。

また、センサーのついた装置に排尿し、尿流量や排尿の時間などを計測したり、排尿直後の下腹部のエコー検査により残尿測定をします。これらの検査により、簡便に排尿障害の有無や程度を調べることができます。

直腸内指診では肛門から直腸に指を入れ前立腺に直接触れ、前立腺の形や硬さ、表面の状態や痛みの有無を調べます。直腸内指診は、前立腺がんなど前立腺肥大症以外の疾患をチェックするための重要な検査です。

前立腺肥大症の治療は?

前立腺肥大症の治療ではまず薬物治療が行われ、症状の改善が思わしくない場合は手術や他の治療法に進むことが一般的です。
薬物療法では主に2種類の薬剤が用いられます。α1受容体遮断薬は、前立腺平滑筋にある交感神経受容体「α1受容体」を遮断する薬で、前立腺平滑筋を弛緩させることで尿道の圧迫を解除して尿を通りやすくします。抗男性ホルモン薬は、前立腺肥大に影響する男性ホルモン(テストステロン)の働きを弱め、前立腺を小さくする薬剤です。

薬物療法で改善が見られない場合や合併症がある場合は、手術治療が行われます。一般的に行われる内視鏡手術では、尿道から内視鏡を挿入し、電気メスやレーザーで前立腺の組織を削り取ります。100gを超える巨大な前立腺肥大の場合は、開腹手術により肥大した前立腺を摘出します。その他尿道から挿入したカテーテルからマイクロ波を発射する温熱療法や、尿道にステントという管を入れて尿道を広げる方法などがあります。
また、水分・アルコール・刺激性食物など食生活の制限や、長時間の座位・下半身の冷えを避けるなど、日常の生活指導を守ることで症状の緩和をはかります。