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膀胱がん

膀胱がんとは?

膀胱は、骨盤内にある尿を溜めたり、排せつしたりする臓器です。尿は、腎臓で作られ、尿管を通過して膀胱に入り、そこで貯えられ、尿意を感じた時に尿道を通して排泄されます。膀胱の表面は、伸縮性に富む移行上皮細胞で覆われていますが、膀胱がんは、この移行上皮ががん化することによって発生し、組織学上から見ると、膀胱がん全体の90%が移行上皮がんです。

膀胱がんは、尿路がん~腎盂がん、尿管がん、膀胱がん~の中では、最も死亡率が高く、7割以上を占めます。罹患率も一番高く、尿路がん全体の約半数です。日本での発生率は、人口10万人中10人位です。男女別の罹患率は、男性の方が女性より、約4倍高く、年齢別で見ると、男女ともに40歳未満は低く、60歳以上で増加する傾向にあります。

膀胱がんは、症状が出やすいため、早期発見率が高い上に、悪性度の低い乳頭状がんの割合が多いため、他のがんと比べると死亡率が低いのが特徴です。

膀胱がんの症状は?

膀胱がんの特徴は、他のがんと違って、比較的早い時期から症状が出やすいことです。最も多い初期症状は、血尿です。血尿は、赤色や褐色の尿が出ることで自分でも気がつきやすく、また尿検査等でも発見できます。血尿の出かたは、全血尿(尿全体が赤くなること)より、終末時血尿(排尿の終わりごろが赤くなること)が多く、血の塊が出てくることもあります。

また、頻尿、排尿痛等の膀胱炎症状も多く見られます。割合でいうと、膀胱がんの患者さんの約80%は、痛みなどのない無症候性肉眼的血尿、残りの20~30%は、膀胱炎症状です。そして、初期症状でなることは稀ですが、膀胱がんが広がり、尿管口が閉塞すると、尿が膀胱まで流れないため、尿管、腎盂が拡張してくる水腎症の症状を呈することもあります。水腎症になると、腎臓機能が低下するので、それが進行すると背中の鈍痛、排便の異常などがあらわれます。

膀胱がんの原因は?

膀胱がんの最も大きな原因は、喫煙です。膀胱がんのうち、男性の50%以上、女性の約30%は喫煙が原因とされています。また、ゴム、皮革、織物や色素工場で使用されている、アニリン系色素、ベンチジンやナフチラミンなどの染料に触れる機会が多いことも、重要な原因になっています。

中東、北アフリカなどの発展途上国では、その地域の地方病であるビルハルツ住血吸虫症へ感染することも膀胱がんの原因の可能性が高いと考えられています。

また、原因の候補として、飲食物では、ワラビ、ゼンマイ、コーヒー、塩素消毒した飲料水、医薬品では、抗がん剤のシクロフォスファミド、鎮静剤(頭痛薬)のフェナセチン(最近発売禁止になりました)が挙げられていますが、いずれも疫学研究としては、一致した結果は得られていません。

膀胱がんの検査・診断は?

現在最も確実性が高い膀胱がんの検査は、膀胱鏡検査です。これは、尿道からファイバースコープを挿入し、膀胱内を観る検査で、多少の痛みを伴います。隆起しているがんの一部分をとって顕微鏡で検査しますが、その際病変の大きさや数、発生部位が確認できるので、殆どのがんの診断が可能です。尿細胞診も診断に有効な検査です。

尿細胞診は、尿中に剥離したがん細胞があるかを見る検査です。尿を用いての検査のため患者さんの負担にならず、何度も実施できるのが利点です。

患者さんの70%は陽性、30%はがんがあっても陰性となってしまいますが、悪性のがんは早い時期から陽性率が高いため有効性があり、内視鏡でわかりにくい上皮内がんの診断では、膀胱鏡より確実です。膀胱がんが見つかった際、広がりと転移の有無を調べるにはCTや胸部X線撮影、腹部エコー等があり、進行度、浸潤度を調べるには腹部CT、MRI検査、腹部及び経尿道超音波検査、排泄性尿路造影等があります。

膀胱がんの治療は?

膀胱がんの治療方法は、がんの状態や転移があるかどうか、患者さんの年齢や体力等を鑑みて決められます。膀胱壁の比較的浅い部分に限局している場合は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)が行われます。

これは、腰椎麻酔をした上で、膀胱内に特殊な膀胱鏡を入れ、電気メスでがんを切除する方法です。再発防止のために、抗がん剤の膀胱内注入をすることもあります。膀胱壁のより深い部分に及んでいる場合(浸潤性腫瘍)は、標準的には膀胱全摘手術及び尿路変更術が行われます。膀胱全摘除術は、全身麻酔を行い骨盤内のリンパ節の摘出と膀胱の摘出を行い、男性は前立腺、精嚢(場合により尿道も)など、女性は子宮などを摘出します。

続いて行う尿路変更術には、尿管皮膚瘻 、回腸導管造設術、自然排尿型代用膀胱等があります。転移がある進行した膀胱がんや、患者さんが手術を希望しない場合には、抗がん剤による化学療法が行われ、通常二種類以上の抗がん剤が使用されます。